お芝居や本の中へふらふら迷い込みながら、気ままに生きる日常の記録。
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「母・肝っ玉とそのこどもたち」
朝は博品館まで「アルジャーノンに花束を」のチケットを買いに行く。
博品館は劇場専属のチケット売り場があるので、そこだと座席表を見て好きな席を選べる仕組み。
私は10時少し過ぎについて、考えていたより人は並んでいたのだけれど、どうも買うのに時間をかけている人がいるらしく、列はちっとも進まない。
結局50分くらい待った。
それでもA列が残っている日は何日かあったので、一応第三希望の日を買うことにした。本当は別の日が良かったのだけれど、やっぱり、どうせなら前で見たいから。
欲望に負けた(笑)

その後、初台の新国立劇場へ。




「母・肝っ玉とそのこどもたち」
新国立劇場 中劇場
作:ベルトルト・ブレヒト
翻訳:谷川道子
演出:栗山民也

母・肝っ玉 大竹しのぶ
長女カトリン 中村美貴
長男アイリフ 粟野史浩
次男シュワイツェルカス 永山たかし
料理人 福井貴一
従軍牧師 山崎一
娼婦イヴェット 秋山菜津子




私は秋山菜津子さんが好きで、昨年末の帝国劇場「SHIROH」では、普段帝国劇場ではB席しか買わない私が、SS席で観る!と言って友達を大変驚かせた(笑)

秋山さんへの愛で最前列どセンターの席を手に入れ、そして当日。

最前列どセンターで秋山さんを見つづける私。
最前列
どセンター

なのに。

私の席はどセンター。
当然、私の目の前がセンター。
宝塚でいえばトップスターの立ち位置、0番。
そこに立つのは、ほぼ間違いなく主役だ。
けれど私は秋山さん見たさにSS席を買った女である。
どんなシーンであろうと、秋山さんが出ていれば秋山さんを見る。
目の前に主役がいようが、いまいが、秋山さんを見る。
主役を完全無視してでも秋山さんを見る。

それくらい、秋山さんが好きなのですよ、とっても。

けれど、今回秋山さんより目をひかれたのが長女カトリン役の中村美貴さん。
カトリンは口がきけない。美人でもない。戦争中なので、当然夫もいない。
強い母の下で、こどものように庇護されて生きている。
長男アイリフも次男シュワイツェルカスも軍に入り母のもとを離れたが、カトリンだけは母とともに車を引く。
母から離れては生きていけない。母はそう思っている。
カトリン自身がそう思っているのかは分からない。
誰も彼女の心が分からない。
母もシュワイツェルカスも言う。
「お前の頭の中が分かったらなぁ」
カトリンは喋れないことでシュワイツェルカスに危険を知らせることができない。
必死でスパイがいることを知らせようとするカトリンを、シュワイツェルカスは無視する。
彼にその気はなくても、結果的にカトリンを無視する。

そのシーンで、カトリンが必死で訴える様が胸に迫る。
大事な弟に迫る危機を、知りながら伝えることのできない焦り、怒り、そして絶望。
喋れないことで、彼女は大切な人を守ることができなかったのだ。
喋ることさえできれば、守れたのに。
カトリンはその無念さをずっと胸に刻み続けていたのだろうと思う。

数年後、山の上でカトリンは敵兵に囲まれる。
母は仕入れに行っていた。
その地に住む人々とともに、カトリンは敵兵が下の町へ攻めていくのを見送るしかない。
他の人々は、下の町の人々が眠っている間に敵兵に不意打ちを受けて全滅してしまうのを嘆く。
「町の人々に知らせることができたら」
人々はそう言いながら、祈る。
「私の弟の子はまだ小さい。あの小さな子たちをどうか守ってください」
カトリンはその言葉を聞いて立ち上がる。
車に積んであった太鼓を持ち出し、叩き始める。
人々がとめても、引き返してきた敵兵に脅されても、カトリンは太鼓を叩くのをやめない。
彼女は危険を知りながら、それを伝えられないことで弟をなくした。
その無念が、カトリンを動かしたのだろう。

カトリンは無言で太鼓をたたく。
全身全霊をこめてたたく太鼓の音が、カトリンがそれまで抱え込み、吐き出す事ができなかった言葉のすべてなのだろうと思った。
それくらい、太鼓をたたく彼女の姿からは鬼気迫り、吐き出されるものがあった。
今まで誰にも届かなかったカトリンの言葉が、最期に町の人々を救ったのだ。

母はそうして最後のこどもをうしない、ただ一人、それでも車をひいていく。

大竹しのぶさんの演技もとても良かった。
秋山菜津子さんも良かった。
それでも一番印象に残ったのは、カトリンの中村美貴さんだった。
またどこかで見られるかな。

久しぶりに力のある舞台が観られて、こういう舞台を観るとやっぱり演劇ってすごいと素直に思う。
そう思える舞台を、来年もたくさん観られたらいいんだけれど。
前半は無理かも。
ねぇ?

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